私が鞄作りを始めた10年前から、日本の鞄職人の数は減少の一途を辿っています。いわゆる私達の界隈では、職人は50代でも若いと言われています。業界は60代、70代の職人によって支えられているのです。若者の参入が殆どなく、高齢の職人は引退していくばかりなので、減っていくのは当たり前なのですが、今日本の縫製現場が変革を求められているのは、紛れもない事実です。
今日はそんな職人不足の現状に対し、その原因と私たちが目指す解決策について書いていきたいと思います。
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-原因-
1.賃金の低さと競争の激化
2.継承問題
3.若者の離職
-解決策-
1.ブランドとして職人を雇い、育てる
2.自社ブランドの直販
3.ものづくりの楽しさを伝える
4.正当な給与
5.デジタル技術の活用
-まとめ-
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-原因-
1. 賃金の低さと競争の激化
鞄職人の仕事は、高度な技術を要するものですが、賃金が他の産業や国と比較して低いため、多くの人にとって魅力的な職業ではありません。小ロット生産が可能な海外工場も増え、国内外で価格競争がが激化している中で、職人たちは低賃金問題に直面しています。今よりもずっと物価が安かった時代と殆ど変わらない工賃で仕事を続けている職人は多く、そのために業界全体の工賃の引き上げが難しくなっています。
2. 継承問題
上記のことから、自分の子供を同じ仕事に就かせたくないと考える職人が殆どで、技術の継承が難しい状況にあります。今まで出会った多くの職人たちは「子供には継がせない」と口を揃えて言います。
3. 若者の離職
それでも稀に、自ら進んで職人になる若者もいます。しかし、独立しても思っていたように稼げず、違う道に進んでしまうことが多いです。このサイクルが続く限り、若い世代が職人としてのキャリアを選んでくれることに期待は出来ません。
-解決策-
1. ブランドとして職人を雇い、育てる
ブランドは自社で職人を雇い、技術と伝統を保持し、新しい才能を育てることができます。職人という職に安定した仕事と給与を保証することで、職人は技術を磨くことに専念できるようになります。
2. 自社ブランドの直販
自社ブランドを直販することで、中間業者に依存せずに利益を確保することができます。十分な利益があれば、正当な給与を保証し、技術への投資に活用できます。ファクトリーブランドの直販は、職人とブランドの間で信頼を強化し、製品の品質を保持するための手段にもなります。
3. ものづくりの楽しさを伝える
ものづくりの楽しさと、やりがいを伝えることも大切だと考えています。職人の仕事は芸術的な側面も含み、自身を表現できる職でもあります。人の手で作られるもの、そこには機械化できない良さがあります。
4. 正当な給与
職人に対して正当な給与を提供することは、この職業を魅力的にする大きな要因です。給与水準の向上は、人々が職人の道を選ぶ意欲を高めます。
5. デジタル技術の活用
デジタル技術の活用も忘れてはいけない要素です。インボイス制度が始まり、WEB3.0、ブロックチェーンの技術が注目される現在、私達の業界は、未だにFAXでやり取りをすることが稀ではありません。産業を次世代に引き継ぐということは、そのまま引き継ぐのではなく、より良く前進させるという事も求められている筈です。色々な技術が進化していく中で、現状維持だけでは淘汰されてしまいます。これまで書いてきた問題点を挙げてきましたが、これらは職人である私達自身にも原因がありました。技術と伝統を守る為には、技を磨くと同時に、時代に合わせて変化するということも無視出来ないことです。怠惰を理由に変化を嫌うことは、間違った姿勢だと気づかなければいけません。
-まとめ-
職人不足は深刻な問題ですが、私達はこの課題を解決したいと本気で思っています。若い世代にものづくりの魅力を伝え、正当な給与を提供することで、日本の鞄業界は再び繁栄し、新しい未来を築ける筈です。日本の職人の伝統が続き、新たな才能とアイデアにより魅力的な製品が次々と生まれる。そんな循環を目指したいと思います。